父親たちの星条旗

Flags of Our Fathers

 

 

★アメリカ*マルバソ・プロ/アンブリン・エンターテインメント/ワーナー・ブラザース/ドリームワークス 2006年度作品

 

★スタッフ
監督■クリント・イーストウッド、製作■クリント・イーストウッド/ロバート・ロレンツ/スティーヴン・スティルバーグ、脚色■ウィリアム・ブロイルズ・ジュニア/ポール・ハギス、原作■ジェームズ・ブラッドレー/ロン・パワーズ、音楽■クリント・イーストウッド/カイル・イーストウッド、撮影監督■トム・スターン、編集■ジョエル・コックス

 

★キャスト
ライアン・フィリップ ジョン“ドク”ブラッドレー
ホセ・ブラッドフォード レネ・ギャグノン
アダム・ビーチ アイラ・ヘイズ
ジョン・ベンジャミン・ヒッキー キーズ・ビーチ
ジョン・スラットリー バド・ガーバー
バリー・ペッパー マイク・スタンク
ジェイミー・ベル ラルフ“イギー”イグナトウスキー
ポール・ウォーカー ハンク・ハンセン
ロバート・パトリック チャンドラー・ジョンソン大佐
ニール・マクノドー セブランス少将
メラニー・リンスキー ポーリン・ハーノイス
トーマス・マッカーシー ジェームズ・ブラッドレー
クリス・バウアー ベンダーグリット中将
ジュディス・アイヴィー ベル・ブロック
マイラ・ターレー マデライン・イヴェリー

 

★おはなし
 太平洋戦争末期、激戦地の一つであった硫黄島での日米の両兵士の激烈な戦いと、戦後、国家のプロパガンダ戦略に借り出された“生き残った米国兵士”の過酷な生き様を通して、戦争の愚かさを鋭く描く…というおはなし。

 

★ひとこと
 イーストウッドにとって『ハートブレイク・リッジ』以来の戦争映画で、実質的にシリアスな戦争そのものを描いたのは、今回が初めて。戦争というものの本質を鋭く抉ったという点で、近来稀に見る傑作に仕上がっているが、戦争で生き残ったにも関わらず、戦後も、思い出したくない戦争を引きずって生きなければならなかった若者を通じて、現代にも十分通用する戦争へのメッセージを深く、そして静かに謳い上げる、観る者の魂を揺さぶられずにはいられない傑作に仕上がっている。

 この手の反戦映画は、今までにも腐る程存在したが、イーストウッド監督による流麗なカメラワークと、明と暗、静と動を巧みに使い分けた完璧な演出によって、単純に“反戦映画”とは呼べない“心に残る何か”が胸を覆う作品に仕上がっているのはさすがで、今一度、戦争について考える機会を与えてくれている。そのイーストウッドの眼差しは、厳しくも優しい。

 

★さらにひとこと
   “硫黄島での戦闘”を描いた原作を元に、日米双方から描き、それぞれで1本の映画にする…というのは、おそらく、映画史上初の試みといってもいいだろう。しかも当初は、片や米国側はイーストウッドが監督、日本側は日本人の監督が担当するという企画であったにも関わらず、結局日米どちらのバージョンもイーストウッドが監督するに至った事についても、初の出来事である。まぁそれだけ、イーストウッド監督の手腕が認められている証拠でもある訳で、と同時に、イーストウッド自身、自分の手で、どちらの側からも描いてみたかった=真実を知りたかった、からに他ならないだろう。

 『スペースカウボーイ』以来ここずっと、“最後に人が死ぬ”というのがイーストウッド映画のモチーフになっていた訳ですが、ここに来て、死と常に隣り合わせの状況である“戦争”そのものをテーマに持って来た所に、イーストウッドなりの死に対する考え方が表れているようにも思えますな。つまり、犠牲的な死、連鎖的な死、尊厳死に続くこの映画が、その一連の“死に対する考え方”の結論であり、集大成であるような気がしてならず、この映画の後、イーストウッドがどの方向に向かうのかが、楽しみでもありますな。

 

★データ
テクニカラー/パナヴィジョン(アナモ)/スコープ・サイズ/ドルビー/dts/SDDS/132分

日本公開:2006年10月28日(ワーナー配給)

アメリカ公開:2006年10月20日(ドリームワークス配給)

 

        

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