チェンジリング

Changeling

 

 

★アメリカ*リレイティヴィティ/マルバソ・プロ/イマジン・エンターテインメント 2008年度作品

 

★スタッフ
監督■クリント・イーストウッド、製作総指揮■ティム・ムーア/ジェームズ・ホワイテイカー/ゲイル・コシンスキ、製作■クリント・イーストウッド/ブライアン・グレイザー/ロン・ハワード/ロバート・ロレンツ、脚色■J・マイケル・ストラジンスキー音楽■クリント・イーストウッド、撮影監督■トム・スターン、編集■ジョエル・コックス/ゲーリー・ローチ

 

★キャスト
アンジェリーナ・ジョリー クリスティーン・コリンズ
ガトリン・グリフィス ウォルター・コリンズ
ミッシェル・ガン サンディー
ジョン・マルコヴィッチ ガスタヴ・ブリーグレブ牧師
コルム・フェオリ クリフ・ジェームズ・E・デイヴィス
デヴォン・コンティ アーサー・ハッチンズ
ジェフリー・ドノヴァン J・J・ジョーンズ警部

 

★おはなし
 最愛の息子を誘拐され、無事に帰って来た息子が別人だと分かったシングル・マザーの主人公が、孤軍奮闘の末、本当の息子を探し出そうとするが、それが大量の幼児誘拐惨殺事件が明るみに出るきっかけになる…という残酷なおはなし。

 

★感想
  待望のイーストウッドの新作。またしても傑作。今回もまた、イーストウッド監督の完璧な演出に酔いしれました。これだけ傑作を連発する監督ってのも、そうザラにある訳で無く、まさに巨匠の風格。それでいて、絶対に巨匠ぶらないところがイイんですな。

 最近のイーストウッド作品、特に今世紀に入ってからの全ての作品に言える共通点としては、一見単純な構造の映画になっているようでありながら、実は多重構造の映画になっているという点ですな。今回の場合も、単に子供が誘拐されて悩む母親の葛藤のドラマ以外にも、当時の警察の腐敗ぶりや、その中にあっての正義感を持った刑事の活躍、或いは、当時から現代にまで綿々と続いている猟奇犯罪に対する批判、並びに、母子家庭でありながらも懸命に生きる女性の姿を描いたりと、色々な構造を持った映画として作られていて、どの面も全て興味深く、また、見事に活写されているのが素晴らしいですな。途中、女囚ものの一編を臭わせるシーンも出て来たりして、宗教家や市民による人権運動の描写もあったりで、どれも興味が尽きず、これほど時間の経過を忘れさせてくれるぐらい鮮やかな映画はありませんですな。

 実話という点も我々の興味を惹くところではあり、『許されざる者』以来、弱い女性の権利の主張を堂々と描ききるイーストウッドの視点は、力強くて確かで素晴らしいですな。今年のベスト1作品は、これで決まりですな。

 

★こぼればなし
   映画マニアの間では周知の事実ですが、『チェンジリング』という題名の映画はこれまでに2本あり、1980年に作られたピーター・メダック監督、ジョージ・C・スコット主演のホラー映画と、今回のイーストウッド映画という事になりますな。で、邦題も同じなら原題も同じで、実にややこしい状況になっている訳でして、今後この映画を語る時は、2008年版『チェンジリング』とかイーストウッド版『チェンジリング』という風に但し書きが必要になりそうですな。

 因みにハリウッドでは、「同じタイトルは、リメイクや関連作品でない限り、別作品に使用する事は出来ない」といったルールがあるようで、以前ピーター・ジャクソン監督の『ブレインデッド』がアメリカで公開されようとした時、既に“Braindead”なる映画が存在したので、そのタイトルを使用出来なかった経緯があったものでした。にも関わらず、それ以後でも、上記の条件を満たしていないのに同じタイトルを冠した映画が何本かある気もしまして、この辺はよく分かりませんな。でも、『ブレインデッド』の場合は、元々外国映画(ニュージーランド映画)だったからという事も言えるのかも知れませんが、今回の場合は、よくよく考えてみると、80年版は“The Changeling”、そしてイースウッド版は“Changeling”となっていて、つまり“The”が付いてるか付いていないかで、あくまでも別題とされているようなんですな。なるほど。だから今回はOKだった訳ですな。ようするにブロンディ風に云うならば、「世の中には二種類の『チェンジリング』がある。“The”が付くヤツと付かないヤツだ」って事になる訳ですな。

 

★データ
テクニカラー/パナヴィジョン(アナモ)/スコープ・サイズ/ドルビー/dts/SDDS/140分

日本公開:2009年2月21日(東宝東和配給)

アメリカ公開:2008年10月31日(ユニヴァーサル配給)

 

                 

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