インビクタス/負けざる者たち

Invictus

 

 

★アメリカ*マルバソ・プロ/メイス・ニューフェルド・プロ/リヴェレイションズ・エンターテインメント/スパイグラス・エンターテインメント=ワーナー・ブラザース映画 2009年度作品

 

★スタッフ
監督■クリント・イーストウッド、製作総指揮■ゲイリー・バーバー/ロジャー・バーンバウム/モーガン・フリーマン/ティム・ムーア、製作■クリント・イーストウッド/ロバート・ロレンツ/ロリ・マクリーリー/メイス・ニューフェルド、脚色■アンソニー・ペッカム、原作■ジョン・カーリン、音楽■カイル・イーストウッド/マイケル・スティーヴンス、撮影監督■トム・スターン、編集■ジョエル・コックス/ゲーリー・ローチ

 

★キャスト
モーガン・フリーマン ネルソン・マンデラ
マット・デイモン フランソワ・ピナール
トニー・ゴロージ ジェイソン・シャバララ
パトリック・モフォケン リンガ・ムーンサミー
マット・スターン ヘンドリック・ブーヘン
ジュリアン・ルイス・ジョーンズ エチエンヌ・フェイダー
アジョハ・アンドー ブレンダ・マジブコ
マーコレット・ウィートリー ナリーン
レレチ・フマロ メアリー
パトリック・リスター ピナール氏
ペニー・ドーニー ピナール夫人

 

★おはなし
 1990年代、南アフリカ共和国の半政府テロリストとして、30年間刑務所生活を送ったネルソン・マンデラが、出所後の選挙で大統領に就任し、新政府を起こしての様々な改革と共に、自国のラグビー・チームをワールドカップで優勝させる為に翻弄する…というおはなし。

 

★感想
  イーストウッドの最新作。そしてまたしても傑作。本当にイーストウッドは、何本傑作を撮ったら気が済むのでしょうか。これほど傑作を連発している監督は、世界広しといえども、今はなかなか居ないのではないでしょうかねぇ。それだけ、現在の他の監督たちのレベルが落ちているとも考えられる訳だけど、それにしてもこの傑作率の高さは尋常ではないですな。普通、何本かに1本は、失敗作や駄作があっても不思議ではないのだが、ここまで水準の高い映画ばかり連発されてしまうと、却ってドキドキしてしまいますな。

 イーストウッドといえば“早撮り”で有名ですが、映画の中身も一切の無駄が無く撮られているのも凄いですな。今回も、2時間13分の長尺が3分半ぐらいに感じられて、アッという間に終わってしまった感じで、この無駄の無さも特筆に価しますな。

 そもそもイーストウッド映画って、実際に撮影する時にも、何度もテイクを重ねたりしないんでしょうね。それと、何かあった時の為に補償で撮っておく、所謂リカバリーショットなるものもわざわざ撮ったりもしないんだと思われますな。つまり、それだけ自分が撮ったものに自信があるというのか、「最初に撮ったもの=劇場で観客に観て貰うもの」という自負と責任が感じられますな。

 だからという訳ではないですが、イーストウッド映画のDVD等のソフトに“NGシーン”や“削除シーン”、さらには“未公開シーン”なるものは全く収録されておりませんですな。それはつまり、最初からそういったものは一切存在しないからであって、それだけコンパクトに、無駄なく撮影されているって事になるんでしょうな。なので、イーストウッド映画に限って、“ディレクターズ・カット”やら“完全版”やら“特別編”やら“ファイナル・カット”やらの別バージョンは全く持って存在し得ないんですな。そう、イーストウッド映画は、劇場公開版こそがディレクターズ・カットであり、完全版であり、ファイナル・カット版である訳なんですな。

 この事を、他の監督さんたちに聞かせてあげたいものですな。DVDが出る度に、やれ“ディレクターズ・カット”や、やれ“完全版”や、やれ“ファイナル・カット版”等を当たり前のようにリリースする腑抜けた監督たちに! 「劇場公開版では時間の都合で収録出来なかったシーンを入れました!」なんて、したり顔で言ってるフザけた監督たちに! それって、「劇場公開版で完全に仕上げられないワタシは、監督としては最低です」と自ら宣言しているようなもので、監督としての資質が問われる重要事項だと思われますな。なので、そういった監督たちには、イーストウッドの爪の垢を煎じて飲ませてやって、今一度「映画監督とは?」という事を問いただし、考え直して貰いたいものですな。

 

★ひとこと
   実在の人物を伝記的に描いたイーストウッド作品としては、今までに『バード』がありましたが、イーストウッドが大好きなジャズ・ミュージシャンだったのに比べ、今回は政治家というのが新しい点ですな。一見、政治色が濃くなりそうな題材ですが、それを上手く料理して、スポーツ(ラグビー)を通して、人種差別や様々な問題=南アフリカが抱えていた諸問題を緩和するという感動ものに仕上げているのはさすがですな。特に、スポーツを描いた映画は、イーストウッドとしても恐らく初めてで、これがまた上手く出来ておりましたっけ。特にクライマックスのワールドカップでの試合シーンは、スポーツもの特有の緊張感も抽出されていて、まるで『ロンゲスト・ヤード』等の傑作スポーツ映画を思わせる充実ぶりでしたな。この映画によって、イーストウッドは、こういったジャンルの映画も撮れる事を証明した訳で、次回作はスリラー映画だそうで、これにも大いに期待出来そうですな。

 

★データ
テクニカラー/パナヴィジョン(アナモ)/スコープ・サイズ/ドルビー/dts/SDDS/133分

日本公開:2010年2月5日(ワーナー配給)

アメリカ公開:2009年12月11日(WB配給)

 

       

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