「ダーティハリー」と「夕陽のガンマン」のDVDについて

Presented by ダーシィさま

 

 

「ダーティハリー」のマグナム射撃音の挿入


 『ダーティハリー』の見所はやはり前半の銀行強盗とラストのスコルピオとの銃撃戦から例の名せりふに続く一連のシーンにあると思いますが、この映画はハリーがこの2つの場面で実際に何発撃ったか数えながら見るとなお面白くなる仕組みとなっています。
 それぞれのシーンでは、5発撃ったあと犯人にマグナムを向ける訳ですが、結果は銀行強盗のときは弾が5発しか装填されていなかったため犯人に向けて引き金を引いても弾は発射されず、スコルピオとの対決では6発目の弾で射殺される結果はご存知のとおりです。

 ハリーの愛銃マグナム44は6連発なので発射数を数えていると、銀行強盗犯に銃を向けたとき、本来ですとあと1発残っているはずが実は弾が入っていないという結果から、観客にハリーは通常5発しか装填していないと思わせ、ラストで「もしや弾切れ?」と思わせるように工夫された展開に劇場公開時やビデオではなっていました。
 しかし、発売中のDVD「ダーティハリー―特別版―」では前半の銀行強盗のシーンでは銀行強盗が車に飛び乗り走り出した後の、後部座席から運転手がハンドル操作をするショットに切り替わる前でマグナムの発射音が挿入されています。

  

 ハリーはプロですから、「俺は何発撃ったかわからない」と言いながらも何発装填されていて何発撃ったか分かっている訳ですが、DVD版では6発発射後に「何発撃ったか」とやっても観客はおろか負傷した銀行強盗犯も銃声を数えていたらあのようなかっこいいシーンにはならず、なぜ銃声が挿入されたか非常に不満が残ります。
 特にハリーは警察の射撃大会の優勝経験を持つ腕前なのに、車を狙って当たらないと
は・・・ハードボイルドさを台無しにする銃声の挿入には見るたびトホホです。

  

 『ダーティハリー』はクリント・イーストウッドの傑作というだけではなく、ポリスアクションの名作を台無しにするワーナー映画の射撃音の挿入には理解できません。
 余談ながら、ビデオとDVDでは銀行強盗の治療を受けるシーンでハリーの日本語字幕の一部も違っています。



『夕陽のガンマン』のカットされた4シーン

 

 『夕陽のガンマン』はビデオ版(ビスタサイズ版、ワイドスコープ版)2本、DVD 版(通常版、アルティメット版)2本が発売されましたが、全部の版に違いがありますので4つの版の違いを検証したいと思います。

まず、最初に発売されたビデオのビスタサイズ版

タイトルシーンで、銃声とクレッジットとの動きが合わない。ラストのエンドマークがTHE ENDのみとなっているほかは全てのシーンがあり、完全版といっていいもの です。

 

 


次に発売されたビデオ版のニューマスター、ワイドスコープ版

画質がきれいになりタイトルシーンの問題も解決されたものの、オリジナルの5シーンがカットされてしまいました。カットされたシーンは次のとおりです。

 

@モーティマー大佐がお尋ね者ガイ・ギャラウェイを巻頭仕留めた際、仰向けに倒れて額にできた弾痕を写したショット。

A続くシーンで大佐が保安官から賞金を受け取り、保安官がお尋ね者の居所がホワイトロックにいると言った後に、「他にも奴を狙っている奴がいる。新顔だ。」という
言葉に続く「名前はモンコだ」というセリフのシーンと、その次のシーンの雷の音とともにホルスターに収まっている銃のアップで始まる部分。

Bインディオが刑務所から脱走するとき、刑務所長の部屋の前でのぞき窓から1発撃った後のさらに駄目押しで4発撃つシーン。

Cモンコとモーティマー大佐がインディオの手下達のリンチを受けるシーンの大幅カット。
オリジナルでは最初はリンチを傍観しているインディオだけが笑っていたのが、リンチがエスカレートするにつれて手下達も徐々に笑い出し、殴られる2人を写す合間にカット割りで手下の笑い顔のアップでリンチの凄みを増幅させるシーンが時間を計ったところ1分近くカットされています。

Dインディオが大佐の妹を自殺に追い込む最後の回想シーンで、死んだ妹のわき腹の
弾痕を写すショット。


DVD通常版の変更箇所。

 

 

@オープニング、銃撃により落馬した後に、音楽が始まる無音部分に製作者アルベルト・グリマルディのクレジットの追加。このクレジットの追加は他のバージョンでは見ることができません。

A脱獄したインディオが笑うシーンが短いバージョンになっている。

Bモンコと大佐のリンチシーンの最後                    
DVD版ではリンチがいきなり終わり、「エルパソの保安官は何をしている?}というインディオのセリフとなっていますが、ビデオ版の字幕を元にすると-インディオ「もういい」-インディオ「しかっり見張れよ 目を離すな」-部下「殺さないんで?」-インディオ「ものには時期がある」-部下「時期?」という会話がなされています。 アルティメット版の特典ディスクでもここのカットについて触れていますが、特典ディスクでは紹介がやや短く実際は上記のやりとりとなっています。


DVD「アルティメット版」

フイルムの全長はDVD通常版と同じため、笑い声とリンチの後の2シーンが同じくカットされています。違う点は…

@DVD通常版にあったタイトルの製作者アルベルト・グリマルディのクレジットがなくなりました。                     

Aモンコがインディオの仲間になり襲撃の段取りが決まった後、「射ち合いがあるなら休んでおかないとな」言っうシーンにかぶる音楽が他のバージョンではシーンの終わりとともに音楽も終わるのが、次のコーヒーをそそぐシーンまで延長されている点が異なっています。

以上のほか、2つのDVD版がビデオ版と異なるのは、投獄中のインディオが最初に登場するシーンて同室の大工が壁に向かい小用を足す音がビデオ版にはありますが、DVD版は水音が消されています。

ビデオのワイドスコープ版はカットシーンは残酷な場面と、「名無しの男」にモンコという名前は不必要という判断で編集されたバージョンですが全体のつながりは問題がなく貴重なバージョンとなっています。また全体で2分ほど短くなっているもののパッケージのランニングタイムは132分のままとなっています。

DVD版のいきなりリンチが終わっているという不自然なカットに不満を持っているファンはビデオのビスタ版とワイドスコープ版で「夕陽のガンマン」の完全版とカット版を見ることが出来ますので、レンタルビデオショップにビデオがある今のうちにDVDのコピーをしておきましょう。

 いずれもアカデミー賞をとった「許されざる者」でイーストウッドが敬意を表した監督の作品ですが、公開当時と違う形に没後変更されるということは、自己の作品の最終編集権をもつイーストウッドがいなくなったときにも将来、配給会社が一方的に作品に手を加えてしまう場合もあるのかと思うと非常に心配です。
C・Eファンとしては、『夕陽のガンマン』は我慢できるとしても『ダーティハリー』については見たことの無い人に鑑賞を薦めるときには画質と音声は劣りますがビデオの鑑賞を薦めたいものです。

 

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