イーストウッドはバスがお好き

                                          (presented by Mr.ショックリー)

 

イーストウッドさんの映画には、バスがよく出てきます。自身で車のハンドルを握る事は、もちろんですが、バイクや旅客機も運転してしまいます。
しかし意外と彼の映画には、バスが出てくるんですね。

なんといっても、『ダーティハリー』。
あくまで挑発的な殺人鬼スコーピィオは、終盤、幼稚園のバスジャックを決行します。
「 ♪ 漕げ、漕げ、漕げよ、ボート漕げよ〜」とスコーピィオが歌うシーン(といっても、そう唄っているのは、テレビ放映版ですが…)はあまりにも有名ですね。
よくNHK−BSで、「映画音楽ベスト100」なんかやってますが、私はこの中に、この曲を入れたいです。
しかし、イーストウッドさんは、バスの天井にしがみつくだけなので、直接乗りはしません。
おまけに振り落とされるわけですが、この時から、イーストウッドさんは、「オレはバスに乗ってやる〜!」と思ったに違いありません。

    乗っ取られたスクールバス          中ではスコルピオ指揮による合唱会       必死にバスにしがみつくハリー       

次は『ガントレット』。
これも武装バスでの市街地突破の場面で有名です。過去様々な、イーストウッド研究本を読むと、このバスを何かに例えて論じてる事が多いです。
ある者は、「ノアの箱舟」、ある者は「男根の象徴」、そして、ソンドラ・ロック演ずる、ガス・マリーとのハネムーンへ向かう新婚カー、派手な銃撃は、祝福のライスシャワーであると、
例える人もいますが、ホンマかいな?
まあ色々な観方があるわけですが、「病んだアメリカの象徴」でないことは確かです。

乗っ取られる運命にあるグレイハウンドバス     そして乗っ取られ…             いよいよ運命のガントレットが始まる

 囲んだ警官たちによる銃撃の嵐         まさに満身創痍状態のバス       傷だらけになりながらゴールに辿り着く…

 

『ダーティハリー4」は、凶悪犯を追跡するハリー自ら、老人施設(?)のバスジャックを行いますが、これは明かにセルフ・パロディですね。おびえていた幼稚園児と違い、ここでの老人達は、追跡劇を楽しんでるわけで、イーストウッドもさすがに苦笑い。

逃げる銀行強盗犯をバスで追うハリー  乗り込んだのは老人施設のバスだった   体当たり戦法で、難なく捕らえるのだった…

 

続いては『ハートブレイクリッジ/勝利の戦場』。
新しく海兵隊に転属されたイーストウッドは、任地に向かうのに、なぜか夜行バスを利用します。車中で、「女のクドキ方」特集を読んでると、途中で、マリオ・ヴァン・ピープルス演じる、ステッチ・ジョーンズと乗り合わせ、まんまと詐欺にひっかかります。
あとで、ジョーンズが、自分の上官であるのに気づきビックリというシーンに繋がるわけなので、ここではどうしても、移動にバスを利用する必然性があったのでしょう。

 

「たまにはバスもいいな」と言っているのは、隣りに座っているマリオ・ヴァン・ピープルズ。イーストウッドは寝ているようだが、起きている。

 

 

最後は『ザ・シークレット・サービス』です。
主人公フランクは職場への出勤は、いつも同僚のアルの車に便乗させてもらいます。
冒頭、囮捜査での恐怖感から、仕事を辞めるか悩むアルに対して、フランクは、「交通手段」がなくなると、ボヤキますが、これは後の伏線になってるんですね。
中盤、容疑者のミッチを追跡中、アルは死亡してしまうのですが、
彼の車に乗るのが出来なくなったフランクは、代わりの交通手段としてバスを利用します。ほとんど誰も乗っていないバスで、疲れた空虚な目で窓の外を見つめるフランク、アルを失った哀しみと、彼を死なせてしまった自戒の念が、伝わってきて非常に秀逸な場面でありました。



アルを失い、失意のドン底で一人静かにバスに揺られるフランク(イーストウッド)。広いバスの中、一人しか乗っていないのが、空虚さを強調している。

 

 

 

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