ペイルライダー

イーストウッド監督11作目は、『アウトロー』以来の西部劇となった。『アウトロー』の時は、「作ったタイミングが悪かった」と言っていたイーストウッドだが、今回も、同じような事を言っていたのは、やはり映画がヒットしなかったからか。同時期には、ローレンス・カスダン監督の『シルバラード』も作られ、ちょっとしたウエスタン・ブームを呼ぼうかとしていた時期だったのだが、どうやら観客には、まだ受け入れられなかったようだ。

しかし、そういう悪い状況の中で作られた本作は、紛れもなく傑作であり、『荒野のストレンジャー』の姉妹編とも言えるこの作品は、ミステリアス・ムードにプラスして、『シェーン』の要素も組み入れられ、本格的ウエスタンの神髄を、イーストウッドが見出さそうと努力しているのが、痛い程伝わってくる、まさに入魂の１作だ。

ラスト・シーンに『シェーン』が引用されているのは、誰の目にも明らかで、主人公のキャラクターから、同居する住人の設定まで、イーストウッドは『シェーン』を意識している。この辺りのイーストウッドの心情は、伺い知れぬ所があるが、映画をどうしてもヒットさせたいという気持ちが前面に表れていたものであると、容易に察しは付くが。

スタッフはいつものメンバーだが、キャストにはいつもとは違う雰囲気を出そうとした為か、異色のキャスティングが組まれているが、イーストウッド扮する牧師のライバルとして登場する悪徳保安官に扮しているジョン・ラッセルは、『センチメンタル アドベンチャー』にも顔を見せていた、歌手のジョン・ラッセルその人であり、この辺りに、イーストウッドらしい拘りが感じられて、何とも微笑ましい。

テクニカラー／パナヴィジョン（レンズ＆パナフレックス・カメラ）／スコープ・サイズ／ドルビー・ステレオ／１１６分

日本公開：1985年９月21日（ワーナー配給）

アメリカ公開：1985年６月28日（ＷＢ配給）